創造のあそび場

ボーダレスなストーリーをお届けします

竜が願いが叶えてくれるなら、何をお願いしますか?

 タイトル『竜になったカメと僕』

 

文字数19371(400字/48枚)

小学生向けの児童文学の募集で、おそらく、2013年くらい書いた物語です。

この物語は、その後、シナリオにして、テレビ局のコンクールにも応募しました。

 

この物語が生れたのは、私の二人の子供たちが通う小学校に、プールの半分くらいの大きさのカメ池からでした。

子供が入学した時に初めてこのカメ池の存在を知り、20匹?はいそうな(正確な数は、未だ知りませんが)中が濃い緑がかかっている、いかにも入りたくない体裁のカメ池に、「これは、物語ができる!」と閃きました。

また、この小学校のシンボルが竜で、校舎の壁面にカワイイ、竜の大きなイラストが描かれいます。

カメと竜。これは、物語になりますよね。

中国の故事の『登竜門』=こいのぼりの淵源となったお話になぞらえて、少年が、人間的に成長していく姿をカメが竜に変身する事と重ねて物語ができました。

 

この物語は、大竜小学校(この地域には昔、大きな竜が住んでいたとの言い伝えがある)に通う小学校5年生の男子、翼君は、引っ込み思案で友達がいません。

毎朝、早く登校しては、主事さんから餌をもらい、カメ池のカメにエサをあげるのが日課です。

そんなある朝、いつものようにカメにエサをあげていると、どこからか声がします。

低く、くぐもった声で『オマエノ、ノゾミハ、ナンダ』

辺りを見回しても、誰もいません。

そこには、背中に金の稲妻模様のあるカメが一匹いるだけです。

そのカメが、また『オレハ、リュウニ、ナル』と話すのです。

このカメ曰く、台風の後の空に虹がかかる時、そこには百年に一度だけ、竜が空に舞う。

その時に一つだけ竜に願いを叶えてもらえると。

カメは、自分も、竜になるとの願いを叶えてもらうんだと言います。

しかし、この竜に出会える条件は①正義の人②勇気の人③親孝行の人

を満たさなければならないとも。

カメは、翼は特別な選ばれた人だから、この3つの条件を満たせば、竜に出会い、願いを叶えてもらえると教えられます。

翼が、叶えたい事は、うつ病になり仕事を休んでいる父親の病気を治すこと。

そうする事で、ダブルワークをしている母親が楽になると思います。

そうして、不思議なカメとの交流を通して、3つの条件を満たすために、翼君は、様々な挑戦をしていきます。

その過程で、はじめてできた親友の同級生の弟が病気で手術をする事になります。

3つの条件をクリアした翼は、いよいよ、竜に出会える日を迎えます。

しかし、竜に叶えてもらえる願いは一つだけ。

翼は、お父さんの病気も治したいのですが、親友の弟の病気を先に治してあげたいと思います。その事を両親にも伝え、運命の竜との対面の日。

虹の彼方に舞い昇る背中に稲妻模様の竜に翼は、願い事をします。

その後、親友の弟も、また、父親も元気になり、仕事に復帰する事ができます。

竜は、翼君の願いを2つ叶えてくれます。

そして、カメ池にいた背中に稲妻模様のあるカメも……。

まさしく、翼君の大成長の物語です。

このお話の中では、実は、翼君のお父さんは、翼君とは血がつながっていません。

その事は、翼君は知りません。

翼君のお母さんが、まだ、赤ちゃんだった翼君を背負い、電車に飛び込み自殺をはかろうとした所を、今のお父さんに助けられたという背景があります。

このエピソードは、以前、聞いた実話です。

実際は、この母親は、二人の子どもを道連れに自殺してしまったそうです。

その時、関わった、男性が、あの時、自分が助けてあげられなく悔いているとの話を伺いました。

私は、この物語に、もしかして、このような、絶望を抱えている人がいたなら、

回りには、たとえ、通リすがりの他人でも、あなたを必要としている人がいるよ。

とのささやかなメッセージを込めました。

今、孤独を抱えて、生きずらい。

もう、死んでしまいたいと思うあなたへの励ましになれば、との祈りです。

 

さて、もしも、願いを一つだけ叶えてくれると言われたら、どんな願い事をしますか?