創造のあそび場

ボーダレスなストーリーをお届けします

天文・宇宙大好きな私が紡いだ物語は、こうして生れました👽

  タイトル「王子様は宇宙人」

 

明日は、七夕です。

その星空気分にちなみ、宇宙人との恋の物語のご紹介をします。

このお話は、昨年、私がよく投稿するブックショートというサイトにて、

お掃除グッズのメーカーさん主催で、テーマが『日本のキレイ』でした。

日本人のキレイ好きは、世界でもピカ一ですが、その心を次世代までも継承していくには?とのメッセージを伝える作品の募集でした。

私は、スケール大きく、キレイ好きな日本人女性が、他惑星の星の王子様に見初められてというお話にしました。

しかしながら、選考落ちでしたので、『全く、ボツ』な作品です。

でも、物語の大枠は、夢があって、私は、好きです。

 

こちらも、大賞は、映像化だったので、受賞者が羨ましいです。

 

短編なので、思い切って全文掲載してしまいました。(ギャオ!(^^)!)

読んで頂けたら、嬉しいです。

 

そして、私の、趣向する物語の方向性が見えてくるかと思います。

文体が、シナリオぽいですが。(文学性には欠けます。予め、ご了承ください)

 

《あらすじ》

時は、少し未来。宇宙は惑星同士が交流する時代。

29歳の独身OLの美輝さんは、キレイ好き。毎日、一番に会社に出社し、自主的にトイレ掃除をしている。ある日、新入社員として帰国子女の真珠さんが入社。後輩として様々お世話をするが、真珠さんの本当の目的とは。

《本文の文字数》9,950

 

 時は、少し未来。宇宙は、惑星同士が交流する時代。

テレビのニュース番組で女性アナウンサーが「アルナイル星の王子、シリウス王子がお妃候補の人選をこの日本で行っている事が明らかになりました」

グリーンとブルーがマーブル模様になった美しいアルナイル星の惑星の映像に20台代の後半のイケメンのシリウス王子の笑顔の写真が画面一杯に映しだされる。

女性アナウンサーが「お妃候補が、沢山の惑星の中でこの地球、そして、日本が選ばれた事は、大変に光栄な事です。シリウス王子のハートを射止めるのは、一体どのような女性なのでしょうか。世界中の注目です」

鏡に向かって、肩までの髪をアップにして、編み込みをしている美輝さんが、最後の仕上げに取り掛かりながら、チラリとテレビを見て、「王子様は宇宙人か~」

美輝さんは、あと3ヶ月で30歳になる、独身OL。自宅から、40分の会社に通勤している。

そして、美輝さんが一人で暮らす部屋はフローリングの4畳半と6畳の洋間にダイニングキッチンがある。部屋はきちんと整理整頓されていて床のフローリングにもキレイにワックスがけしてあり美しい光沢がある。

髪をキレイに整えた美輝さんは、ダイニングキッチンのテーブルに用意された和食の朝食を食べる。

横には、彩きれいなお弁当が置かれている。

ご飯を食べながら「ん~美味しい」と満足な笑みを浮かべる美輝さん。

 

オフィス街に立ち並ぶ立派な、高層ビルに入って行く美輝さん。

入口に総務部と書かれた表札の部屋に入って行く制服姿の美輝さんに、中で「今日も、早いね」と言い、笑顔であんぱんと牛乳を頬張る課長さん。

「おはようございます。そおゆう課長も早いじゃないですか」と荷物を置き、笑顔で応える美輝さん。自分の席の机の引き出しからエプロンを出して身に付ける。

アンパンを食べ終えて、牛乳を飲み干した課長さんが、「俺は、満員電車が苦手だから、始発で出社だけどさ。君は、入社以来―、っていうと?」

「9年と9ヵ月です」

「そんなになるのか。毎日偉いよ。ほんと頭が下がるよ。そうだ。今日から新人さんが入るから、よろしく頼むね。君に任せておけば安心だからな」

「はい。承知しました。じゃあ、巡回行ってきます」

美輝さんが女子トイレの中に入り、ボックスの中のトイレや洗面台などの汚れをチェックする。汚れを見つけては、拭き掃除をする。手慣れた手つきで、素早くこなしていく。

その後も、まだ、始業前なので、男子トイレにも入って行き、チェックをし簡単な掃除をする美輝さん。

総務部に戻った美輝さんに課長さんが、若い女性の新入社員を紹介し、

「こちら、今日から、我が総務部に配属された新星真珠(しんせい・まこ)さんです。新星さんは、帰国子女で、日本での生活は短いらしいから、色々わからない事が沢山あるかも知れないけど、よろしく頼みます。こちらは、我が総務部、いや、我が社の自慢の女子職員ですから、何でも教えてもらってくださいね」

美輝さんは、うっとりするほど美しい顔立ちの真珠さんに見惚れているが、課長の振りに我に返り、慌てて「よろしくお願いします」と挨拶をする。

真珠さんも美しい笑顔で「どうぞよろしくお願い致します」と挨拶をする。

 

美輝さんが真珠さんを連れて、会社の各フロアを案内する。どのフロアも、きちんと整理整頓してあり、キレイな環境に整えられている。

廊下を並んで歩く美輝さんに真珠さんが「日本の会社って、本当にキレイですね」

「そうね。我が社は、扱っている商品がお掃除の製品だから、特に注意して整理整頓と社内の清掃を心がけているのよ」と美輝さんは、真珠さんをトイレに案内する。

「ここが一番キレイじゃないといけない場所なのね」と美輝さんが、洗面台などに飛び散った水滴や髪の毛をペーパーでさっと拭き取る。

それを見て「あの~トイレのお掃除も、私達のお仕事なんでしょうか?」と遠慮気味に真珠さん。

「お掃除をしてくれる方を雇っているので、私達、社員がしなくてはいけないわけではないです。でも、自分が使った時に汚れていたら気が付いた人がお掃除すればキレイな状態が保てて気持ちいいですよね」

「それって、自分がですか?」

「自分もですけど、他に使う人も気持ちがいいですよね」

「はぁ~。他に使う人が…。そう、ですね…」

 

広い社員食堂は、お昼時間で賑わっている。

一角に数人の女子社員に混じって、美輝さんと真珠さんが向かい合い座っている。美輝さんは、手作りのお弁当を広げている。真珠さんも、他の女子社員たちも、トレーに乗せられた定食を食べている。

真珠さんが美輝さんのお弁当を覗き込み「ご自分で作られたんですか?」

「ええ」と卵焼きを頬張る美輝さん。

ぽっちゃりの女子職員が茶化すように「美輝先輩は、お料理上手でキレイ好きで、仕事もテキパキこなすのよ~。そんな、女子力が高い先輩が、なんで、お嫁に行けないのか、これ、我が社の七不思議なのね~」

「ちょっと、私は、お嫁に行けないんじゃなくて、今は、まだ、そおゆうお相手がいないの」と美輝さんが、お箸の先で制する。

痩せてメガネをかけた女子職員が「美輝先輩は、理想が高いんですよ。この会社の中だって、先輩を狙っている奴は、私が知っているだけでも、数人はいるもの」

「あら~、そうなの~そんな話、初めて聞いたな~」と気にとめるでもなくお弁当のおかずを食べる美輝さん。

「そういえば、今朝のニュースでアルナイル星のなんとか王子が、ここ日本でお嫁さんを探しているってやってたでしょう。アルナイル星の王子様、見た目もイケメンだし、いいな~」とうっとりとするぽっちゃりの女子職員。

真顔になった真珠が「シリウス王子です」

「そう、そんな名前だったわね。でも、なんでこの日本で花嫁を探すのかしら?自分の星に素敵な彼女が、見つからないのかしらねぇ」とぽっしゃり女子職員が、定食のおかずを食べる。

真顔のままの真珠が少し早口で「シリウス王子様は、今後の自国の発展の為にも、高品質なDNAを求めています。宇宙の中でもこの地球は、一番美しい星と評判で、その中でも、この日本は、伝統的に美観を大切にします。街は、どこも清潔でキレイです。公共の場も自分以外の人も利用するので、勝手に汚してはいけない、という、いつも他人の立場に立って物事を考えるという教育が、全国民に染み込んでいます。それは、他の国にはない特性です。」

ぽっちゃり女子職員と痩せたメガネ女子職員が口をあんぐりと開けて真珠さんを見つめる。

2人の反応に「あ、真珠さんは、海外生活が長かったらしくって、客観的に日本を見ているのね」と美輝さんがフォローする。

笑顔になり真珠が「私の情報プログラムには、そのように登録されています」

「なんか、おもしろい方ね~真珠さんて」と顔を引きつらせたメガネの女子職員。

それから一週間が経ち、ある朝、美輝さんが会社に出社すると、エプロンを付けた真珠が笑顔で

「おはようございます。美輝先輩お待ちしていました」

「あら~、真珠さん、早いわね~」と笑顔で応える美輝さん。

「私も、美輝先輩に見習って、キレイで快適な環境づくりを身に付けたいと思います。」

「(笑って)そう、では、行きましょうか」

「はい」

美輝が男子トイレへ、真珠が女子トイレへと入って行く。

美輝は、手慣れ手つきで、男子トイレの点検をし、清掃をする。

真珠は、まるでロボットのような動きで、女子トイレを指で一つ一つ確認しながら、点検し清掃する。

そして、あるお休みの日の午後、美輝さんは、課長さんからの連絡を受けて、大きな大学病院の病室へ。

課長からの連絡によると、真珠さんが一人で住むアパート部屋の上の部屋から出火し、真珠さんの部屋の天井は、焦げてしまい、消防で真珠さんの部屋は水浸しになったと。

この時に真珠さんは煙を大量に吸い込み、意識を失い、救急車で病院へ搬送されたそうだ。

6人部屋の一番奥のベットに診察服姿の真珠さんが横たわってる。

美輝さんに気が付き笑顔になる真珠さんに「大丈夫~?」と駆け寄る美輝さん。

「はい。生きています」

「課長から連絡もらって、びっくりしたわ。でも、無事で本当に良かった」

「私も、気が付いたらこの病院でした。これは、全くの想定外だったので、プログラムが誤作動して、一度は、再起不能になったようです。まだ、任務が遂行されていませんから復活できて良かったです」と一気に早口に言う真珠さん。

美輝さんは、話の内容に多少の不自然を感じるが「命が助かって良かったわ」

「はい。この度、予測不能の事態ではありましたが、病院に入院できた事で改めて、日本のキレイを知る事ができました」

「日本のキレイ?」

「この病院は、朝・昼・晩と清掃員の方が簡単なお掃除をしてくれます。そして、この床も

特別なワックスを床に施し衛生的にかつ美観を維持しています。更に強力洗浄と除菌・消臭を同時に行える洗剤で清掃しているので院内感染などの心配もなく安心して過ごすことができます」

「真珠さん、いつの間に、そんな情報を…」と戸惑いながら、床などを見回す美輝。

「はい。私は、衛生状況には、過敏に反応するようにプログラムされていますので」

「プログラムねぇ…」

「日本に来て、靴が汚れないという事が素晴らしいと思います。道は、キレイに舗装、整備されていますし、建物の中も床がキレイに磨かています。そして、この病院では、キレイだけではなく、衛生的に整備されています。日本のキレイは、この惑星の最大の誇りです」

「真珠さんが言う通リね。ずっとこの状態で生活してきたから、当たり前だって思っていたけど、日本のキレイは、自慢の文化なのね」

「はい。本当に素晴らしいです」

「だけど、真珠さん。退院してからが困るわよね。元のお部屋は、水浸しですぐには生活できないし。確か、ご家族も海外にいらっしゃるんでしょ?」

「はい。とても遠い所に住んでいます」

「良かったら、私の部屋にこない?」

「それは、大変に嬉しいです。その方が、今後の私の任務もスムーズに行えます」

美輝さんが遠慮がちに「あの~、任務って――、一体、何なのかしら?」

「それは、今は言えません。しかし、心配しないでください。決して犯罪や危険な事ではありません。」とニッコリ微笑む真珠さん。

翌日に退院した真珠さんは、美輝さんの部屋で一緒に暮らす事になり。

美輝さんの部屋をひと通リ案内してもらった真珠さんは「さすが、美輝先輩のお部屋ですね。お掃除がキレイにされていて、ほら、床も、ピカピカで光沢があって美しいですね。こんな快適なお部屋でこれから過ごせると思うと嬉しいです」

「褒めて頂いてありがとう。私の、おばあちゃんも、お母さんも、いつもキレイにしていたから、キレイにしてるのが、習慣になっているのよね」

「キレイにする事が習慣になるとは、やはり、良いDNAは、継承されていくという証明ですね。これは、貴重なデータです」と真顔で言う真珠さん。

「ねぇ、もしかして、真珠さんって、どこかの国の掃除会社の社員で、その…言い方悪いけど、スパイ?なんじゃないの」

「なるほど。美輝先輩、鋭いですね」

「えっ!?ビンゴ!!」

「ビンゴ?それは、どおゆう意味ですか?私の翻訳データにはありませんので、理解不能です」

「あ、ごめんなさい。その真珠さんがスパイって、当たっていますか?って言う意味なんだけど」

「正確には、ハズレです。私は、他の国の清掃会社の社員ではありませんので」

残念そうに美輝さんが「そうなんだ~。あ、ごめんなさいね。色々詮索しちゃって。真珠さんが、本当の事を話してくれるまで、待つわ」

「はい。美輝先輩の望は、近い未来にとても良い結果として出ると、私の受信データが反応しています」

「真珠さんって、なんか、不思議な人ね」

「それは、どおゆう意味でしょうか」

「どおゆう意味?ん~だって、翻訳データとか、受信データとかって言うじゃない。まるで、機械みたいっていうか…。あ、ごめんなさい。海外生活が長かったからよね」

真珠さんの目が一瞬ピカッと光るが、美輝さんは、気づかない。

「さぁ、この話は、やめにして、少し早いけど、晩御飯にしましょうね」

美輝さんは、ダイニングキッチンに行き、手早く食事の支度を始めながら、

「今日は、疲れているでしょうから、真珠さんは休んでいて~」

「はい。ありがとうございます」と言い、ソファに座って美輝さんをじっと見つめる真珠さん。

美輝さんを見つめる真珠さんの目が、大きく見開かれ、強い光線のような光が放たれる。

真珠さんの視線に気が付かずに、テキパキと食事の支度をする美輝さん。

 

それから、一週間後の日曜日の朝。

大きな公園で、美輝さんと真珠さんがゴミ袋を持ち、捨てられている開き缶やペットボトルを拾う。公園のあちこちでも、中高年層や高齢者の男女が同じようにゴミ拾いをしている。

ゴミを拾いながら美輝さんが「ごめんなさいね。真珠さんにも手伝わせてしまって」

「いえ。こんな体験は、初めてなので、楽しいです。キレイ好きな日本人も、こうして、ゴミを散らかすんですね」

「そうね。この清掃活動は、月に一回だけど、結構、ゴミが捨てられているのよね」

20個程の一杯になったゴミ袋が一か所に集められている。

その近くで、ベンチに並んで腰掛けて、ペットボトルのお茶を飲む、美輝さんと真珠さん。少し離れたベンチに腰掛けている男女の高齢者のご夫婦。

男性の高齢者が美輝さんに「今日は、また、若くて偉いべっぴんさんを連れてきましたね」

「そうなんですよ。私の会社の新人さんなんですよ」

高齢者の女性が「お掃除は、昔から身も心もキレイにすると言われていますからね。お二人とも、ますます、美しくなりますね」

真珠が「お掃除は、昔から身も心もキレイにするとは、何の、データベースでしょうか」

高齢者の女性が困ったように「データ…ベース?」

美輝さんが「つまり、昔からの言い伝えとは、具体的に誰が言った事ですかって、質問かしらね」

高齢者の男性が「それは、お釈迦様が掃除の五つの功徳と言われています」

美輝さんが、分かるかしら?といいう風に真珠を見ると。

真珠が察して「お釈迦様という人物は、わかりますが、功徳?とは何でしょうか」

「まぁ~ご褒美っていう事ですかね」と男性の高齢者が笑顔で答えて、

続けて「そのお釈迦様が、掃除をすると1、自分の心が清らかになる。2、他の人の心を清らかにする。3、この世の全ての存在が生き生きとする。4、すっきりと美しい行為の種がまかれる。5、死後、必ず天上に生を受ける。って言われていますよ」

真珠が「最後の、死後、必ず天上に生を受ける。とは、どういう意味ですか」

高齢者の男性は、笑顔になり「私も、まだ、体験してないからわかりませんがね。きっと、今の肉体が亡くなって、魂だけになった時に、自分が願った通リの最高の状態で、また、生れてこれるって事でしょうかね」

真珠の目が、また、一瞬、ピカッと光り「そうですか。お掃除をするという事は、そんなに素晴らしいご褒美をもらえるんですね。その偉い人の教えが、この国、また、この星の人々の心にしっかりと継承されているんですね」

「そうでない人達も、沢山いますけどね。でも、その心は、いつまでも大切にしていきたいですね」と男性の高齢者が言う。

「その心は、必ず、継承されていきます。ここにいらっしゃる、美輝先輩がその使命を果たしてくれるはずです。私は、そのように、報告します」と真珠の目がピカッと光り、美輝をじっと見つめる。

真珠の目の輝きに少し動揺しながら美輝が「そ、そうよね。これから、私達が、自分の子供達にも、きちんと伝えていかなくちゃね」

「はい。高品質のDNAを残して行く事。それが一番大切な任務であります」と更に目を光らせて遠くを見つめる真珠。

真珠のリアクションに違和感を感じる、美輝。

 

その日の晩、美輝さんの部屋のべランダで、パジャマ姿の真珠さんが、夜空を見上げていると、お風呂上りで、パジャマ姿の美輝さんがベランダに出て来て、

真珠さんと同じように夜空を見上げて、美輝さんが「あ~、随分と星がキレイに見えるわね」

「美輝先輩は、ここではない惑星に行ってみたいとは、思いませんか?」

「そうね~。ごく一部の人が、宇宙旅行に行った話をテレビで見たりして、いいな~って思うけど、実際は、まだ、すごくお金がかかるし、いろんなテストがあって、簡単には行けないしね」

「でも、お金もかからずに、簡単に行けるなら、行ってみたいと思いますか?」

「そうね。死ぬまでには、一度、行ってみたいかな~」

真珠の目が、ピカッと光り「承知しました。そのように報告します」

「あのさ~。また、こんな事、聞いて悪いんだけど、真珠さんは、誰に、何を報告するの?」

「それは、今は、言えません」

「そう…よね…」

「美輝先輩、もうすぐ、お誕生日ですよね。正確には、あと15日後ですが」

「え~、そうだけど、どうして知ってるの?」

「私の、基本データにそう登録されています」

「基本データ?まぁ、同じ会社の総務部だもんね。調べればすぐにわかるわね」

「この国の厚生労働省の情報によりますと一般の女性の結婚適齢期は、29.4歳となっています。そうしますと、美輝先輩は、現時点で、まさしく結婚していい適齢期という状態ですね」

「そんなに客観的に言われるねぇ~。確かに、あと15日で30歳だから、その一般的な結婚適齢期を迎えてけど…」

「美輝先輩は、今現在、結婚を前提にお付き合いしている、男性はいないし、その気配も感じられませんが、間違いないでしょうか?」

「また、そんなに客観的に言われるとねぇ~。その通りだけど」

「では、結婚したいと言う意思は、ありますか?」

「それは、…あります」

「承知しました。美輝先輩のような素敵な女性にふさわしいお相手が、もうすぐ、現れると思います」

「それは、それは、ありがとうございます」

笑顔で、夜空を見あげる、美輝さんと真珠さん。

夜空に無数に輝く星々の中にひときわ大きく明るく輝く星が、ピカッピカッと点灯している。

真珠さんは、その星をじっと見つめて、そして、真珠さんの目が、今までで一番強く光り。

夜空を見あげている美輝さんは、その、真珠さんの目の光に気づかないで、とても幸せな気分に浸っていました。

そして、美輝さんのお誕生日の日。

いつも通リに仕事を終えた美輝さんと真珠さん。

会社を一緒に出ると真珠さんが「今日は、美輝先輩のお誕生日ですから、ちょっと一緒に行って頂きたい所があります」

「え~、どこに?」

会社を出た道路に大きな黒塗のリムジン車が停まっていて、黒いスーツに白い手袋をした運転手がドアを開けて立っている。

「さあ、どうぞ、乗ってください」と笑顔の真珠さん。

「えっ。でも、どこに行くのかしら?」と不安がる美輝さんだが、体は自然と車に吸い寄せられるように乗り込む。

そして、真珠さんも、車に乗り込むと、車は、静かに動き出し、美輝さんは、ふかふかのシートに寄りかかり、そのまま、深い眠りに落ちて行く。

車が、静かに停まり、美輝さんが目を覚ますと辺りは、真っ暗闇。

真珠さんが「さあ、到着しました」と言い先に降りるので、美輝さんも続いて車から降りた瞬間に強烈な光に照らされる。

美輝さんが、手で光を遮りながら、目を凝らすと目の前に巨大なドーム型の宇宙船が。

そして、ドアが開き、中から、一人の男性が降りてくる。

真珠さんが、美輝さんをそっとエスコートするように「さあ、参りましょう」と促す。

光の反射で男性の顔は見えないが、美輝さんと真珠さんが近くまで行くと、

「やっと、お会いできましたね」と笑顔でいう男性。

美輝さんは男性の顔を見つめて、どこかで、見たようなうなと必死で記憶を辿る。

真珠さんが「シリウス王子様、スピカ、任務を完了いたしました」

男性と真珠さんと見比べて美輝さんが驚き「え~、あの。シ、シリウス王子様って!?え~!本物ですか?」

男性は「はい。初めまして。私は、アルナイル星のシリウスです。お目にかかれて光栄です」

その後、ひとしきり、大騒ぎした美輝さんも、やっと落ち着き、宇宙船の中へ乗り込み。

 

美輝さんは、シリウス王子にエスコートされて、宇宙船の中の180度ガラス張りの広い室内に案内される。

美輝さんが、辺りをキョロキョロと見回していると、軽い振動がして、窓の外の景色が高速で変わって行く。

笑顔のシリウス王子が「今日は、美輝さんのお誕生日と聞いています。是非とも、お見せしたものがあります」

いつの間にか、体にピタリとした宇宙服に着替えた真珠が横に立っている。

シリウス王子が真珠を見て「私の、部下のスピカが、大変にお世話になりました。心から御礼申し上げます」

「スピカって。真珠さんが、王子様の部下?ですか?」と美輝さんが真珠を見る。

「私の名前は、スピカと言います。日本語に翻訳すると真珠と変換されます。シリウス王子様のお妃候補の美輝先輩の素行を調べる為に地球に参りました」

シリウス王子が「彼女は、スピカは、実は、ロボットなんです」

「真珠さんが、ロボット!?な、なんか…色々と理解が難しい事ばかりで…」と困惑する美輝さん。

シリウス王子。私は、美輝先輩が、我が、アルナイル星の王妃にふさわしい方と判定しました」

真珠さんの報告を受けて満足そうにシリウス王子が「実は、スピカに搭載している特殊なカメラで、美輝さんの生活を見させて頂きました」

「え~そ、そんな~。私の、え~。嫌だわ~」と困惑する美輝さん。

宇宙船の窓からは、漆黒の宇宙にひと際美しく輝くグリーンとブルーの惑星が見えてくる。

シリウス王子が「さあ、こちらにいらしてください。あちらに見えるのが、アルナイル星です」

美輝さんは、アルナイル星を見つめて「なんてキレイなんでしょう」とうっとりする。

「美輝さん。私と結婚してくだい」とじっと美輝さんを見つめるシリウス王子。

「け、結婚って。いや、あの、私が、王子様とですか?」

「はい。私と結婚して、アルナイル星で一緒に暮らしてください」

「で、でも。私、今日、王子様と初めて会ったばかりだし、結婚っていうと、その…」

「そうですよね。私は、スピカを通して、美輝さんを充分観察させて頂きましたが。どうでしょうか、このまま、少しの間、私と一緒にアルナイル星で過ごしませんか?」

「え~、私が、アルナイル星で、王子様と一緒に過ごすんですか?」

「お嫌ですか?」と爽やかなシリウス王子の笑顔に、

「いえ、はい。伺います」とコクリと頭を下げる美輝さん。

それから、あっという間に地球では、半年ほどの時が過ぎ。

テレビで中継で、女性アナウンサーが

「今日は、アルナイル星と宇宙中継がつながっています。世界中が注目した、アルナイル星のシリウス王子が、ご婚約を発表されます。お相手は、日本国籍の池田美輝さん、30歳です」

後ろのモニターにシリウス王子と並んだ美輝さんの映像が映される。

美輝さんの会社の会議室に集まった沢山の社員達も、テレビ画面を見ている。最善列に陣取った課長さんとぽっちゃり女子職員とのメガネの痩せた女子職員がいる。

ぽっちゃりの女子職員が、テレビ画面の美輝さんを見て「あ~、美輝先輩ったら、すっかりキレイになっちゃって~やっぱり、女は、恋をするとキレイになるのね~」

メガネの痩せた女子職員も真顔で「あの美輝先輩が、まさか、アルナイル星の王子様と結婚するなんて。羨まし過ぎるんですけど」

モニターに映されたシリウス王子が「私は、この度、池田美輝さんと結婚する運びとなりました」

女性アナウンサーが「この度は、大変におめでとうございます。シリウス王子様は、池田美輝さんのどのような所に惹かれたのでしょうか」

シリウス王子は、隣の美輝さんを慈しむように見つめて、

「私が、一番、美輝さんに惹かれた所は、「キレイ好き」である事です」

課長さんが大きく頷き「そうだ。その通リ!」

更にシリウス王子が「彼女は、自分の身の周りのみならず、周りの方々に対しても深い思いやりと誠意を持って接し、常に目配り、気配り、心配りのできる素晴らしい女性です。日本の古くからの言い伝えで、名前は、その人の人格を表すと聞いていますが、美しく輝く美輝さんは、まさしくその名前の通リの方です」

恥ずかしそうに、微笑む美輝さん。

「私達の結婚で、宇宙の中で最も美しい惑星の代表である地球とアルナイル星が永遠に美しく輝き続ける事を願います」

微笑み合い、見つめ合うシリウス王子と美輝さん。

漆黒の宇宙にひと際美しく並んで輝く、地球とアルナイル星。

こうして両惑星のキレイは末永くつづいていくのでした。            おわり