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短編小説全文掲載「笑ってよ」実はR15指定?

第11回  タイトル「笑ってよ」R15指定

この物語は、2018年3月末の締め切りで書いたお話です。

お題が、著作権が50年経っている物語を2次創作するというものです。

なので『ロシア昔話:笑わない王女』をベースに創作しました。

私的には、全くのステキなファンタジーなラブストーリーですが、

これを読んだ夫が「(我が家の)子供には、読ませるな」との指定をされました。

ので、一応、我が家では、R15指定をしています。

きっと、我が家の子供や、その他のお子様が読む事はないかと思いますが。

読まれた皆様は、どうお感じになるか。

とても短い物語なので、また、全文掲載させて頂きます。

 

💛是非、感想を頂きたいですねぇ。💛

 

 

《あらすじ》

イケメン俳優の俺は、『笑顔がステキな貴公子』とのキャッチコピーで人気者に。しかし、ハネムーン先で、妻がバンジージャンプで事故死してしまう。その日から笑えなくなった俺は、脳の機能が壊死してしまう奇病になる。治療は、『笑う』事。出会ったマスクの女性は、俺を笑わせてくれた。その女性がマスクをはずすと…。

 文字数:4122

 

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目覚めると、隣で笑美はまだ眠っている。

俺は、上半身を起こして背を向けて横向きに寝ている笑美の顔を覗き込む。

昨晩、激しく愛し合った後、そのまま眠ってしまったから、俺も、笑美も全裸のままだ。

艶やかな長い黒い髪。

肌理の細かい白い肌。

顔にかかった黒い髪をそっとかき上げ、

「やっと手に入れた宝物…スマイル・エンジェル」

笑美の耳にかけてある、マスクのひもを静かに外す。

外気に触れた肌が解放感からか、笑美の顔が小さく動く。

しかし、直ぐにまた、小さな寝息を立てる。

笑美の顔を見つめて、俺は、なるべく声を出さないように笑う。

やがてその笑い声は、だんだん大きくなっていく。

笑美が、俺の笑い声で目を覚ます。

目覚めた笑美を愛おしくて、力一杯抱きしめる。

「俺のスマイル・エンジェル。ずっと、俺を笑わせてくれ。愛しているよ」

また、我慢できなくなり、笑美の肌理の細かい白い肌を愛撫する。

笑美は、俺が外したマスクのひもを耳にかける。

そして、俺の愛撫に呼応して、マスクの中でくぐもった小さな官能の声をあげる。

全裸の笑美が、マスクをしているのは、理由がある。

 

大学生の時にアルバイトで始めたモデルの仕事でCMに起用された俺は、

『笑顔がステキな貴公子』とのキャッチコピーで一躍人気者に。

その後、映画やドラマの仕事でも成功し、アジアを中心に海外にも進出するようになった。

そして、前からファンだったアイドルから女優になった彼女と、30歳の誕生日を迎えた年に結婚した。

ネムーンに出かけた南アフリカで、彼女は、バンジージャンプをするという。

正直、俺は、気が進まなかった。渡るだけでも、足がすくむような桟橋から、ダイブするなんて。

彼女にびくついているのをさとられまいと、笑顔で「お先にどうぞ」と譲った。

「本当は、怖いんでしょ。私が、お手本を見せてあげる」と彼女は満面の笑顔でダイブした。

彼女は、そのまま帰って来なかった。

勢いよくダイブした時に命綱が切れて、そのまま地面に打ち付けられてしまった。

 

その日から、俺は、笑えなくなった。

しばらく仕事も休んだ。

 

そして、復帰したCMの仕事では、以前のように『笑顔がステキな貴公子』を求められた。

しかし、どんなにしても俺は、笑顔が作れなかった。

マネージャーや担当の代理店の宣伝マンに別室で延々と励まされ、諭されても、俺の顔は、能面のように固まったままだった。

 

笑えないだけじゃなかった。

ドラマの仕事で台本を貰っても、全くセリフが覚えられない。

 

病院に行き検査すると、笑わない事で、ある脳機能が後退し、このまま笑わなければ、痴呆になりやがて、脳全体が壊死をしてしまうと。

笑わない事が、脳にそんな影響を与えるとは信じられずに、名だたる脳の専門病院を数件受診したが、見解は同じだった。

これといった薬もなく、唯一の治療方法はただ『笑う』事。

 

しかし、何をしても、何を見ても笑えなかった。

鏡を見つめて作り笑顔をしようとしても、俺の顔は、ピクリとも動かない。

そんな自分を情けなく、また、惨めになり、ほとんど外に出なくなった。

 

 仕事もこなくなり、引きこもっていたある日、強烈な歯の痛みに襲われた。

仕事をしていた時は、毎月口腔ケアをしていたが、しばらくの不摂生な生活から虫歯ができたらしい。

以前の行きつけの歯科で虫歯の治療をしてもらい、診察台で横になっていると、マスクをした歯科助手の女性が入ってきて、診察台を元に戻しながら、

「今日の診察は、これで終わりです。……あの、笑えますか?」

何を聞かれているかわからなくて「はっ?」と聞き返す。

歯科助手の女性は、マスクで顔のほとんどは隠れているが、二重で切れ長の目元は、真剣な表情で、

「笑えないって、本当ですか?」

俺の近況は、マスコミでも報道されているから、知っているのだろう。

「ああ。はい……」

「あの、私、仕事があと一時間後に終わります。大事なお話がありますので、少し、お時間取って頂けないでしょうか」

切羽詰まったような、真剣な様子のこの歯科助手の女性の誘いを受ける事にした。

 

一時間後に指定された駐車場に、歯科助手の女性は、胸元まで下した真っすぐな黒髪に不似合いな地味な着古したトレーナーにデニムパンツ姿で現れた。

そのままマスクをしていたので、先ほどの歯科助手の女性とわかった。

車の助手席に座った歯科助手の女性は、シートベルトを締めると、

うつむいたまま「少し、ドライブしませんか」と申し訳なさそうに言う。

車を発進させて、さて、どこに行こうかと考えをめぐらせる。

 

外は、すっかり暗くなり、都会のネオンが煌めいている。

「あの~、どこかで食事でもしましょうか?」とうつむいたままの歯科助手の女性に尋ねる。

「いえ。この近くに桜がきれいな墓地があります。そこに連れて行って頂けますでしょうか」

言われたとおり、都会のど真ん中の墓地の近くのパーキングに車を停めた。

桜は、ほとんど散ってしまい緑の葉がついた桜の木のトンネルをうつむいたままの歯科助手の女性と並んで歩く。

「あの~もしかして、花粉症ですか?」

歯科助手の女性は、立ち止まって、俺を見つめる。

「いや、仕事が終わっているのに、マスクしたままだから。まだ、この時期は、花粉すごいんですよね。俺は、そうじゃないから、わからないけど」

歯科助手の女性は、首を振り、小さな声で「違います」と言い、また、歩き始める。

俺も、少し後を歩くと、歯科助手の女性が立ち止まる。

俺も、立ち止まると、歯科助手の女性は、背を向けたまま

「私、あなたに、笑ってほしくって」

「……」

「ずっと、あなたのファンで、あの歯科に通っているって知って、転職したんです。

でも、あなたは、しばらくお仕事も休まれて……報道で笑えない病気だって知って」

ゆっくり歯科助手の女性は、振り返って、俺達は向かい合う。

「私、あなたに笑ってほしい……」と言いマスクをゆっくりはずすと。

俺は、街灯に照らされた歯科助手の女性の顔をじっと見つめた。

しばらく見つめていると、

自分では抑える事のできない、込み上げてくる感情が湧き上がる。

そして、まるで嘔吐するように、俺は、笑った。

その笑いは、しばらく続いた。

やっと、気持ちが落ち着き

「…ご、ごめん。ほとんど初対面の、それも、女性を見て笑うなんて…」

「いいんです。私は、あなたに笑って欲しかったので」

そう言って歯科助手の女性は、泣き出した。

「いゃ、ほんと、ごめん。俺、君を傷つけてしまって…」

と言いながら、また、込み上げてくる笑いを抑える事ができなくて笑ってしまう。

歯科助手の女性に背を向けて、やっと笑うのを抑えていると。

「私、嬉しくって泣いているんです。あなたが、笑ってくれて。心から嬉しいんです」

「俺も、嬉しいよ。こんなに笑えたのは何年ぶりだろう。笑うって、こんなに幸せな気持ちになるんだなって、はじめて知ったよ」

「あの…、大変にぶしつけな申し出なんですが、私を、雇ってください」

俺はゆっくり振り向き、

「雇うって?」

「マネージャーさんはいらっしゃると思いますし、お仕事のマネジメントは私にはできませんので、あなたの、身の回りのお世話をさせていただければと存じます。家政婦というか、付き人といいますか」

「君が…」

「お給料はいりません。今、一人で暮らしていますので、恐縮ですが、住み込みでお食事だけいただければ結構です。でも、もしも、恋人がいらっしゃるなら……」

「いないよ。妻が死んでから、ずっと一人さ」

「あなたが、また、以前のように笑えるようになったら、私は、あなたの前から消えます。この関係は、一切口外しません。そして、二度とあなたの前には現れませんので」

真剣に俺を見つめる歯科助手の女性の目は、とても優しくて、全てを受けいれてくれる暖かな光に満ちていた。

吸い込まれるように、気が付いたら、歯科助手の女性を思いっきり抱きしめていた。

長い黒髪からは、ほのかに石鹸の香がする。

固くなったままの体が少しずつほぐれていくのが伝わってくる。

「名前、教えてくれないかな」

「…えみです。笑うに美しいと書きます」

「笑美さん…。出会ったばかりだけど、お願いします。俺のそばに居てくだい」

 

そして、笑美は、俺の家で一緒に暮らしはじめて、俺達は、必然的にこうして愛し合うようになった。

 

はじめて俺達が結ばれた時。

笑美の体は官能的で女性としての魅力に満ちていた。

愛撫している俺は、今まで経験したことのないほどの高揚感で合体しようとしたが、笑美の顔を見た途端、笑いが止まらなくなった。

そうしているうちに俺の息子は使いものにならなくなった。

「ごめん。俺、どうしたんだろう。気持ちは、いきたいんだけど…」

笑美は、静かに全裸のまま、マスクをつけて、

「これでお願い致します」

「えぇ~。ホントに?」

「はい。正直、私も、あなたが初めてではありません。以前はこうしていました」

笑美には申し訳ないと思ったが、全裸でマスクをした笑美に俺は、メチャクチャ欲情した。

野獣のごとく笑美に突入して、それに、笑美も応えてくれた。

それから、ずっと、このスタイルで俺達は、愛し合うようになった。

 

笑美が傍にいてくれるようになり、俺は、前のように笑えるようになった。

亡くなった妻には申し訳ないが、今の俺には、笑美なしでは生きていけないほど、愛する人だ。

仕事も、前よりも、質の高い、いい仕事が入るようになった。

マネージャーが言うには、笑美と暮らし始めてからの俺は、数段、男前になったそうだ。

内面から滲み出る色気や人間としての魅力が増したと。

 

笑美と暮らし始めて一年が過ぎた頃、俺達は、南の島の教会で、二人きりの結婚式をあげた。

神父に促されて、誓いのキスをするのに、純白のウエディングドレスのベールをあげて、笑美の顔を見つめると、また、笑いが止まらなくなる。

最初は怪訝な様子の神父も、笑美の顔を見て、必死に笑いをこらえている。

 

なんとか、笑美に誓いのキスをして、俺は、心から誓った。

笑美、一生君を愛するよ。

君がそばにいていてくれたら、ずっと俺は、こうして笑っていられる。

そう、笑美は、俺に、笑顔を運んでくれる天使だから。

                                    おわり

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この物語を読んだ夫は「笑美が“どんな笑える!(^^)!顔”かの描写があった方がいい」

としつこく主張していました。

私は、映像的には、読者の方に自由に想像・妄想して頂きたいと思い、書きませんでした。

これも、ご意見・ご感想を頂きたいですね。

 

《是非、ご感想・ご意見、欲しいわ~リスト》

  • R15指定は必要か?
  • 笑美の顔の描写は必要か?
  • 物語が短すぎる?
  • その他、何でも!